今夜は雨。スタジオのレジデント、通いの猫ポーちゃんが、戸口から雨を眺めています。ポーちゃんはおじさんで、数年前に左手の先を失ってしまったようでした。その時はまだ付き合いがなく、Bryantが前足が血だらけになっているポーちゃんを時折り見かけ、捕まえて治療をしてあげないと、と言い続けていましたが、私はその時のポーちゃんを見ることはありませんでした。ポーちゃんが食事に来るようになったのは1年半ほど前からで、傷を負い、克服し、どう見ても百戦錬磨な感じのでっかいポーちゃんが、こんなに心を許してくれるようになるとは思ってもみませんでした。手の先を失っても、いざとなるとダッシュもするし、塀の上にも跳び上がれるポーちゃんは、ほんとうにたくましいのです。

スタジオ内の天井はどこもかしこもBryantの作品で覆われています。Bryantが使う様々な色に埋め尽くされた天井の下に初めて足を踏み入れた人は、間違いなく「わぁ、すごっ!」と言う言葉が口から漏れます。色と、ありとあらゆる物たちに、視覚と感覚が圧倒されるからでしょう。どこを見ても、同じ景色がないのです。まず何処に焦点を当てればよいのか、目移りどころか、目が泳いでしまうのです。どこもかしこも、何かが重なり合い、ひと目見ただけでは、全貌が分からない、そんな感覚になるのです。ある種のショック状態です。でも、そのショックから立ち直り、何が起きているのか見てみよう、と観察を始めると、どんどん発見があります。全てが幾重にも重なりあっていることに気づきます。パウル・クレーの絵のようだな、と私はいつも思います。色やら何やらが何層にも重なり、ただ表面を見ているのではなく、私たちはその重なり合いからしか生まれることのない、特別な効果を見ているのだ、と思わされるのです。Bryantの絵は勿論、音楽も、創作物も、彼を取り巻く環境も、様々な層が醸しだす効果なのです。
REVEREND MESHELL NDEGEOCELLO FELLOWSHIP BASSが到着しました。MESHELL NDEGEOCELLOと言えば、Bryantが彼女のツアーに加わっていたことをご存じの方もいらっしゃるかも知れません。REVEREND GuitarsはBryantの地元、Detroitでスタートしたメーカーですが、今回、このベースが届くに際しては、ベルリンにあるPLEK社で弦高がBryantの希望に合わせて調整されて来ました。ヘッドストックがひっくり返っているのも格好良い。ベースが何本あっも、新しいものが届くのはほんとうに嬉しいようです。演奏が楽しみです。
Bryantは様々な作品を創り出していますが、圧倒的に多いのは絵、その次が立体作品です。左側の作品は、90cmx90cmの板に描かれているので、額を含むと110cmx110cm程の大きさになります。絵具だけでなく、紙や布や色々なものが何層にも重なり、その表面がえぐられたり、削られたりして出来上がった作品は、絵と立体の中間の様な存在です。この額を選んだ時、額縁屋さんが、なかなかこの額のボリュームに合う絵を見ることがない、絵が額に負けてしまう、と言っていました。それは、絵の大きさだけのことではなく、内容と、質感と、そこに込められた思いの全ての総量なのだろうと思います。右側の立体作品も、多くの素材から創られています。創作の過程で土に埋められてもいました。ガラスや鏡や刃物や、見ても見ても見尽くすことができない作品です。それは、この二つの作品に限ったことではなく、Bryantの多くの作品に共通する特徴でもあります。パッと見ただけでは、何が起きているのか分からない、凝視せざるを得ない表現と色彩が、Bryantの作品の魅力になっているのです。
今朝、我が家のレジデント猫のココちゃんが、口に何かくわえてスタジオに入って来ました。口の両端から羽のようなものがはみ出していたので、でっかい蛾でも捕まえて来たのかな?と思いよく見ると、鳥のようではありませんか!?食べさせるわけにはいかない、とココちゃんの背中を叩いても全く口を開けないので、持ち上げて左右に振ると、口からポロッと落ちたのはスズメのヒナでした。しかも生きている!巣から落ちたのをたまたまココちゃんが見つけ、持ち帰って来た様子。助けなければ!とすぐブライアントを呼びました。私は犬と猫はお産から助けられますが、野鳥のヒナのことはイマイチよく分かりません。が、ブライアントは野鳥の飼育も経験があるので、ほんとうに助かります。とりあえずキャットフードをふやかしてシリンジで与えてみたところ、食べる!でも、シリンジにフードが詰まってしまい、それを押し出すと凄い勢いで飛び出しまい、ヒナをフードまみれにしてしまうので、ホームセンターにひな鳥用のパウダーフードを買いに行き、それを与え始めました。ブライアントは、今日と明日持ちこたえれば大丈夫、というので、頑張ります!お盆ですから、色々な命が行き交います。